月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 やっぱり紅くんのそばは温かい。

 ホッとする。

 一生同じ場所にしかいられないとしたら、私は間違いなくここを選ぶと思う。

 紅くんの肩に鼻を寄せると私をぽんぽんする手がピタッと止まった。



「・・・茜、今俺のこと匂ったでしょ」

「うん。だっていいにおいがするもん」

「ただの柔軟剤の匂いだよ」

「それでも紅くんのにおいだよ」



 紅くんは清涼感のあるシトラスの香りがする。

 この香りがすると紅くんのそばにいるんだって実感して幸せになる。

 あと畳の匂いも好き。

 私の家はずっとフローリングで畳と関わることなんてなかったのに、何故か懐かしく感じる。

 時間を忘れて紅くんにもたれかかっていると、ぽつりぽつりと窓を叩く音が聞こえ始めた。



「雨だぁ」



 そういえば今日雨が降るって学校の子が話してたっけ。
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