月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「俺には御守りがあるから、絶対に死なないよ」
「御守り?」
「そう」
ベッドから降り、スーツの胸ポケットから何かを取り出して戻ってきた。
「これ・・・」
差し出されたものを見て、目を瞬かせた。
すっかり色落ちしているし、触り心地も良くなくなっている。
それでも私はこれが何かすぐに分かった。
「私が紅くんにあげたハンカチ・・・?」
「そうだよ」
「まだ持っててくれたの?」
「うん。これがずっと俺を支えててくれたんだ」
私がおもちゃの指輪を肌身離さず持っていたように、紅くんもハンカチをずっと持ってくれていたんだ。
質は落ちていても、糸のほつれや汚れはない。
「・・・大事にしてくれて、ありがとう」
「これからもそうするよ」
いつの間にか溜まっていた涙を指の腹で拭ってくれた。