月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私の中から不安が抽出されたようだった。

 そのまま押し倒され、頬や首筋、おでこ、そして唇にキスを落とされる。

 ハンカチはサイドテーブルに置かれたのが見えた。

 触れるだけのものからすぐに深いものに変わる。

 耳を両手で塞がれると水音が脳裏に響いて気持ちいい。


 理性ごとグズグズに溶かされていく。



「茜、好きだよ」



 耳元で囁かれて身体がゾクッとした。

 まるで私が何かを期待してるみたいた。

 キスの合間に残った理性で言葉を紡ぐ。



「ん、すき」

「愛してる」

「あいしてる」



 紅くんに言われたことをそのまま返すとクスッと笑われた。



「舌足らずで可愛いね」



 愛を満ちた声で告げられた。
< 196 / 278 >

この作品をシェア

pagetop