月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 紅くんのことばかり考えてたからほとんど覚えてないや。



「そうだね。傘持ってきてたっけ?」

「家にわすれちゃった」

「じゃあ貸すね。それか送ってくよ」

「・・・・・・」



 そう言いながら立ち上がろうとした紅くんの服をぎゅっと掴んだ。

 雨が降り出したから急いで帰って洗濯物を取り込まないといけない。

 その後もう一度洗濯し直さないと。

 それから、それから・・・─────。

 しないといけないことはたくさん思い浮かぶ。

 でもどれもしたくない。

 だってそんなことしたところで、待っているのは独りで眠りにつくことだけだから。



「今日帰りたくない・・・・」



 我慢しようと思っていた。

 こんなこと言っても迷惑をかけるだけ。
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