月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私の知っている"鈴木真那"のいう人物の輪郭がぼやけていく。



「撫子と長春は?私の護衛だったんだけど、無事?」

「スタンガンで気絶させただけだから気にするな」



 なるほど。だから私たちに悟られることなく2人が倒されていたのか。

 ベッドで逡巡する私のそばに椅子を持ってきた鈴木真那がそこに腰を下ろした。



「お前の好きな奴って月詠紅だったんだな」

「そうだよ」



 微かに鈴木真那の眉尻が下がった。

 その視線の先には私の婚約指輪があった。



「あのおもちゃの指輪もその指輪もあいつから?」

「うん」

「学校を辞めたのもあいつの指示?」

「ううん。私の意思」



 よどみなく言い切った。
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