月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 それでもつい、本音をこぼしてしまった。



「どうして?」



 紅くんはいつも私に話しかけるように尋ねてきた。



「お母さん、男の人とデートだから家に帰っても1人なの」



 朝ホワイトボードにそう書かれていた。

 つまり私は雨音だけが静かに聞こえる家で一夜を乗り越えないといけない。

 そんなのもううんざりだ。

 紅くんは俯く私の顔を覗いて、視線を合わせた。



「じゃあこのまま泊まる?」

「いいの?」



 わがままを言ったのは私だけど、こんなにあっさり受け入れてもらえるとは思っていなかった。



「うん。明日土曜日だし、問題ないよ」

「やったぁ!紅くんありがとう!」



 首に腕を回し、また抱きついた。

 紅くんは私の背中をそっと支えてくれた。
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