月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私の誕生日の翌日、紅くんに「学校行く?」と尋ねられ「もう行かない」って答えたのだ。元より紅くんと再会するまでって決めていたし。

 その後学校にある私の物は全て処理したと聞いた。

 世間では多分行方不明扱いになってると思う。



「・・・何で全部あいつが持ってくんだよ」



 鈴木真那は悔しそうに俯き、髪をぐしゃっと握りしめた。

 私はそれを無言で見つめる。



「胡蝶」

「何?」

「お前、月詠紅に騙されてるぞ」

「紅くんに・・・?」



 心当たりがなさすぎて首を傾げる。

 蒼くんたちに対して時々嘘を織りまぜて話すのは知っていたけど、私に対してそんな素振りはなかった。

 もし嘘をついてたら私が気づかないはずがない。

 そもそも私を騙すつもりなら、記憶の奥に閉じ込めておきたかったはずの鈴井雛菜の話なんてしない。
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