月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 いまいちピンとこない私に、鈴木真那が痺れを切らしたかのように声を荒らげた。



「あいつはお前の思っているような優しい奴じゃない!全部まやかしだ!」

「紅くんは優しいよ」



 間髪入れずに言い返した。

 私の反応が気に入らなかったのか、余裕をなくした鈴木真那がベッドに乗り込む。



「っそれはあいつが何をしてきたのか知らないから言えるんだ!!」

「じゃあ紅くんが何をしたっていうの?」



 鈴木真那は勢いそのままに私をベッドに組み敷いた。身動きがとれない。

 感情を全てぶつけるように、両手首を掴まれた。



「あいつは、俺の家族を全員殺した!!父さんも母さんも姉ちゃんも!姉ちゃんなんか、あいつの婚約者だったのに!あいつのこと大好きだったのに!!何の罪もないのに躊躇なく全員殺りやがった!!!」



 鈴木真那の悲痛な叫びを聞いて、脳内にある人物が浮かび上がった。
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