月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 でもだからこそ、現実を見てもらわなければならない。



「私は小学二年生のとき、鈴井雛菜に拉致された」



 私の告白に、鈴木真那の目がこれでもかというぐらい見開かれた。



「紅くんと仲良い私が邪魔だったんだって。紅くんの助けが遅かったら、私はあのとき死んでいたかもしれない」



『死』の部分を強めて言うと、ビクッと肩を揺らした。



「それでも鈴井雛菜たちに何の罪もなかったって言える?」



 鈴木真那の顔から色が抜け落ちていく。

 どうやら知らなかったみたいだ。

 きっと今、鈴木真那の中で優しい姉の姿が揺らいでいるのだろう。


 私は依然として話し続ける。



「もちろん紅くんも無罪じゃないよ。それはちゃんと分かってる。その上で一緒に罪を背負うことを選んだの」



 一点の曇りもなく言い切った。
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