月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私にとって紅くんは、どこまでも王子様だった。








「いただきまーす!」

「いただきます」



 あの後紅くんがシャテーに何か指示をしてしばらく待っていると、夕食が運ばれてきた。

 メニューはハンバーグと味噌汁とポテトサラダとお米。あとミニトマトもついてきた。

 お弁当や給食にはない、家庭ならではの献立に胸が踊る。

 急遽買ってきてもらった子供用の箸を使ってお米を口に運んだ。



「! おいしい!」

「そう。よかった」



 いつもと全然違う!と衝撃が走った。

 お米がもちもちしている。

 ハンバーグからは肉汁が溢れ出てきた。

 味噌汁の油揚げにも大根にも味が染み込んでいる。

 ポテトサラダには嬉しいことに、私の嫌いな人参が入っていなかった。

 全部温かく、そして柔らかかった。
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