月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 いきなり日本刀で斬りかかってきたから、持っていた拳銃で受け流す。

 ひとまず距離をとり、俺も抜刀した。



「月詠紅だな。俺のこと覚えてるか?」

「知らない」



 キィィンっと金属のぶつかる音が響く。



「鈴井真那。お前の婚約者の弟だよ」

「"元"でしょ。なんだ、お前か」



 どうりで似ていると思った。面倒臭いその性格が特に。


 身長は俺の方が高いが、鈴井真那の方がフィジカルが強い。

 単純な力技だけだと俺は負ける。

 それを分かっているから鈴井真那は(つば)迫り合いを持ちかけてくる。



「胡蝶は渡さない」

「口だけは達者だね」



 どれだけ劣勢でも俺は余裕の笑みを浮かべる。

 あくまで俺の方が上だと示すように。



「茜は俺の可愛い婚約者だよ」



 鈴井真那の顔が分かりやすく歪んだ。
< 223 / 278 >

この作品をシェア

pagetop