月ノ蝶、赤縄を結ぶ
いきなり日本刀で斬りかかってきたから、持っていた拳銃で受け流す。
ひとまず距離をとり、俺も抜刀した。
「月詠紅だな。俺のこと覚えてるか?」
「知らない」
キィィンっと金属のぶつかる音が響く。
「鈴井真那。お前の婚約者の弟だよ」
「"元"でしょ。なんだ、お前か」
どうりで似ていると思った。面倒臭いその性格が特に。
身長は俺の方が高いが、鈴井真那の方がフィジカルが強い。
単純な力技だけだと俺は負ける。
それを分かっているから鈴井真那は鍔迫り合いを持ちかけてくる。
「胡蝶は渡さない」
「口だけは達者だね」
どれだけ劣勢でも俺は余裕の笑みを浮かべる。
あくまで俺の方が上だと示すように。
「茜は俺の可愛い婚約者だよ」
鈴井真那の顔が分かりやすく歪んだ。