月ノ蝶、赤縄を結ぶ
黒染めした髪にヘーゼル色の瞳。
日暮組の組長である日暮千歳がソファーに座っていた。
以前紅くんから教えてもらった日暮千歳の概要が脳内で自動再生される。
日暮千歳は若頭として成熟した30歳のときに当時の組長──千歳の父親──を下し組長へと這い上がった。
それから一度もその座を譲ることなく、今年で喜寿を迎える古狸のような男性。
日暮組討滅作戦の最終目標。
倒すべき標的。
その日暮千歳の目が獰猛に光っている。
今まさに紅くん達に拠点を潰されているとは思えないほどの余裕っぷりだ。
「初めましてだね、胡蝶茜さん。───いや、時峯茜と呼んだ方がいいかな?」
喋り方は穏やかなのに、目は全く笑っていないし含み笑いが気持ち悪い。
それに『時峯茜』って誰。
「楝について何か知っているかい?」