月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私が普段食べている物はどこか機械的で、真心が込められていない様に感じることが多い。

 なんでかなって考えた結果、不特定多数のために作った物か、私のために作った物かの違いなんじゃないかという結論に至った。

 私の記憶の限り、私のためのご飯は今までなかった。

 離乳食ですら市販のもので済ましていたらしい。



 ああ、ここなら私、独りじゃないんだ。



 紅くんがずっとそばにいてくれるし、ご飯を作ったりお箸を買ってきてくれるシャテーもいる。

 なんだか鼻の奥がツンと傷んで、視界がぐにゃりと歪んだ。

 頬を涙がつたうのが分かった。



「え、茜?どうしたの?どこか痛む?」



 紅くんの眉が少し下がった。

 紅くんの表情はほとんど変わらないのに、私を心配してくれているんだ。

 そのことに気づくと余計涙が溢れてきた。



「ううん。ホッとしたの。ホッとしたら、なみだが・・・」

「・・・そっか」


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