月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 紅くんは箸を置いて、私の頭に手をそえるように撫でてくれた。



「よしよし。茜は独りじゃないよ。俺がいるからね」



 どうして紅くんは言って欲しいことを、言って欲しいタイミングで言ってくれるんだろう。

 私が泣き止むまでそうしていたら、すっかりご飯が冷めちゃって、目を見合わせて2人で笑った。

 もう1回温め直したご飯も美味しかった。







 紅くんの家の檜風呂を堪能した後、箸と同様にシャテーが急遽買ってきたパジャマに着替えた。

 ちょっと袖元がブカブカだ。

 でもデザインはうさぎ柄で可愛い。

 パジャマを渡されるとき紅くんに念を押すように「一応言っとくけど買ってきたのはちゃんと女だからね。男には頼んでないからね」と説明されたっけ。

 紅くんがこれを選ぶイメージも、紅くんのシャテーもこれを選ぶイメージもないから納得した。

 紅くんのシャテーは、顔はいいほうだとは思うけどそれよりも厳つさが目立つ。眼帯をしてる人もいたし。

 お風呂上がりでぼけーとテレビを見ていると、布団を敷き終えた紅くんが手招きした。
< 24 / 278 >

この作品をシェア

pagetop