月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 でも長くは持たない。

 だから状況が変わる前に、紅くん早く来て、お願い・・・!!!



「茜!!!!」



 襖が吹き飛び、私に光が射した。



「紅くん・・・!!!」

「茜、死にたいの───?」



 紅くんの視線は首元に当てたナイフに向いていた。

 他の人が動けないでいる中スタスタと私の元に歩み寄り、私の手ごとナイフを自身の方を向けた。



「死ぬなら俺も連れてって」



 希うような声だった。



「ま、待って、紅くん。私まだ死ぬつもりないよ。今はただ、脅してただけで・・・」

「そっか。1人で頑張ってたんだね、偉い」



 私の手からナイフを抜き取り、ギュッと抱きしめてくれた。

 シトラスの香りが肺を満たす。

 微かに汗の匂いもする。
 ここまで必死に走ってきてくれたんだ。
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