月ノ蝶、赤縄を結ぶ
ぽん、ぽん、と頭を撫でられると全身の力が抜けた。
「もう大丈夫だよ。俺が助けに来たから」
耳元で囁かれた柔らかい言葉に胸がいっぱいいっぱいになって、涙腺が決壊した。
子供のように泣きじゃくる私を紅くんが受け止めてくれる。
・・・怖かった。
いきなり連れ去られて独りぼっちになったことが。
敵しかいない場所で呑み込まれないように立ち向かい続けることが。
本当に鈴井真那と婚約させられかけたことが。
ひとつのミスすら命取りになりかねない環境にいることが。
全部、全部、全部、本当は怖かったんだ。
必死に平然を保っていたから、気づけなかった。
私は心の奥底ではずっと震えていたんだ。
紅くんは私でも気づけない弱さに気づいてくれる。
そして全部包み込んでくれる。
「それで───どう落とし前つけるつもり?」