月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「あなたが毎日話しかけてくれたから、私は話し方を忘れなかったんだと思う。でももう私の前に現れちゃダメだよ」
次会ったらもう見逃せないからね、と含みを込めて笑う。
こうして"鈴木真那"と言葉を交わせるのも最後だ。
私は鈴木真那のことが恋愛的には好きじゃなかったけど、人としては好きだったみたい。
まぁ未練を残されたら困るから言わないけどね。
「バイバイ」
颯爽と歩いていく私たちを、鈴井真那が憑き物がとれたかのような顔で見つめていた。