月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「いいよ」
姫に傅く王子のように、丁寧な動作で左手を持ち上げ、そっと指輪をつけた。
薬指にはまった婚約指輪を見て満足そうに唇を落とすと、それが手の甲、手首へと移る。
「んっ」
手のひらにキスされるとくすぐったくて声が出た。
「茜、大好きだよ」
久々の言葉に胸が震える。
「私も大好き」だと伝える前に口を塞がれた。
触れるだけものから舌を絡ませ貪るようなものに変わるのはあっという間で、紅くんから与えられる好意を一身に受け止める。
濡れた唇が情欲的で、すぐに次が欲しくなる。
紅くんの視界全てを独り占めしたい。
明るい時間にこんなに求めてくるのは初めてで、何だかいけないことをしているみたい。
背徳感が刺激される。
自分が今何をされているのか明瞭に分かるから、身体が敏感にはねる。