月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 でも紅くんの手が太ももを撫でたところで、はっと現実に戻された。



「す、ストップ!」

「ん」



 手の前でバッテンを作ると紅くんの動きがピタリと止まった。

 あ、危なかった・・・。

 このまま流されてたら車の中で最後までしてしまうところだった。

 さすがに"初めて"が車内は嫌。

 ふぅと息をつく一方で紅くんは不満そうにしている。



「えっと・・・疲れてて、眠いの」



 苦しい言い訳かな。

 でも本当のことを言ったら「いいじゃん。しよう」って誘惑されかねないし、それに勝つ自信も全くない。

 紅くんは何か言いたそうに私を見つめた後、ひょいっと抱き上げきて膝の上に座らされた。



「じゃあ、おやすみ」



 紅くんの肩口に頭を預けると、愛おしそうにギュッと抱きしめてくれた。

 私は今も昔も紅くんの腕の中が一番安心する。
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