月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私以外に誰もいないから、誰にも傷つけられない私だけの居場所。

 ちょっと上を向けば、大好きな人が微笑んでくれる。


 私には紅くんさえいればいい。


 時峯藤治の孫だとか父親が誰だとか私には関係ない。

 私はずっと紅くんの一番そばにいたい。

 まどろみながら安堵に浸る私の頭を紅くんは愛おしそうに撫でてくれる。

 時峯藤治に撫でられたときとは全く違う。

 紅くんの体温は私のものとすぐに交わってひとつになるの。



「紅くん」

「うん?」

「私、紅くんに頭撫でられるの好き」

「じゃあこれからもたくさん撫でるね」

「ありがとう。あとぎゅーってされるのも・・・キスも、好き」



 瞼を開けるとパチリと目が合った。

 紅くんの瞳は期待に揺れている。



「誘ってるの?」

「・・・ちょっとだけ」



 紅くんは口角を上げて短いキスを落とした。
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