月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 でも紅くんは机に肘をつき、平然と応対する。



「おかしなこと言うね?茜は俺のだ」

「茜を物扱いするんじゃない!」

「俺の婚約者って意味だったんだけど・・・そう聞こえた?」



 これは「茜を物みたいに言ってんのはそっちでしょ?」という嫌味として受け取ることが出来る。

 というか紅くんはそのつもりだ。

 さすがにここは難色を示した國光麹が割って入った。



「言い過ぎですよ、月詠」

「口を挟むな國光。今はただの護衛だろ」



 紅くんは見もせずに切り捨てた。
 時峯藤治もそれを咎めない。

 完全に蚊帳の外に追いやられた國光麹は、再び空気のように壁際に立った。

 ここで時峯藤治の視線が紅くんの腕に抱きついている私に移る。



「茜も茜で何故そんなにこやつにくっついておる。このいけ好かない若造に!」

「私は紅くんが好きだから」



 前回とは打って変わってタメ口で答えた。
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