月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 一昨日時峯藤治と初めて対峙したとき、"孫"と仲良くなりたさそうだったから試しにそうしてみた。

 敬語で話したとき残念そうにしていたし、私が手を握って話したときはちゃんと耳を傾けてくれたから、的外れではないはず。



「あと、もう無理やり引き離されたくないから」



 静かに告げると、時峯藤治が居心地悪そうな顔をした。

 日暮千歳の話を鵜呑みにし、私と鈴井真那を婚約させようとしたこと悔いているのだろう。



「その件はワシが悪かった。そして今までのことも全部。早い内にお前を迎えに行っておけば、お前が母親のことで苦しむこともなかった。いやそもそも息子があんな女と関係を持たないようちゃんと管理しておけば・・・」



 どうやら私の生い立ちを調べたらしい。

 つらつらと懺悔を口にする時峯藤治に対し、私の気持ちは段々と冷めていく。


 今、自分の息子を"管理"しておけばと言った。

 管理ってなんだろ。

 行動を全て監視することかな。

 それか一昨日私の話を聞かずに婚約を決めたように、選択肢を与えることなく勝手に人生のレールを引くことなのかな。
< 252 / 278 >

この作品をシェア

pagetop