月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 紅くんを見上げると、過去を懐かしむように頭を撫でてくれた。

 その様子を眺めていた時峯藤治がぽつりと呟く。



「茜は今、幸せなのか」

「うん。紅くんといるといつも幸せだよ」



 はっきりと告げると、時峯藤治はそっと瞼を閉じた。



「そこまで言うなら、分かった。2人の結婚を認めよう」

「!」



 思わず紅くんに抱きつこうとしたけど、その前に時峯藤治が声を張り上げた。



「ただし!条件がある。茜は胡蝶ではなく時峯の人間として嫁ぐこと。これだけは譲れん」

「いいよ」



 迷わずに了承した。

 胡蝶でも時峯でもどっちでもいい。

 私が"月詠茜"になることに変わりはないから。
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