月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 日暮組討滅作戦に問題があったからじゃない。


 足りなかったのは先を見通す狡猾さだ。


 でもそれを今から身につけろと言っても無理がある。

 紅くんには紅くんなりのやり方が確立しているから。

 それならまだ何者でもない私が身につければい。

 更に私が時峯藤治の孫として紅くんに嫁ぐなら、紅くんが正式に月詠会会長になれるはず。

 私たちは8年離れていても大丈夫だったのだからきっと今回も乗り越えられる。

 私の覚悟を理解した紅くんは、瞳にまつ毛の影を落としながらも、ゆっくりと頷いた。



「・・・分かった」



 別れを惜しむように私の肩口に頭を預けてぎゅうっと抱きしめる。



「服、沢山送るからね。電話もできるだけ毎日したい。あと婚約指輪、外ししちゃダメだよ」

「うん」

「帰りたくなったらいつでも言ってね」

「うん」



 広い背中をぽんぽんとあやしながら気持ちを受け止める。
< 258 / 278 >

この作品をシェア

pagetop