月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「そうかそうか!どこの株がええんじゃ?」
時峯藤治に問われ、幾つかの企業の名前を上げていく。
この1年で私は時峯藤治から経営学と経済学を学んだ。
一見この島に引きこもっているように感じるけど、時峯藤治はきちんと時峯グループの会長だった。
その手腕は目を瞠るものばかりで、日々新しい知識が頭に入り込んできた。
ほぼ毎日そばで学んでいたせいで後継者争いをしているいとこ達から警戒されたけど、紅くんの婚約者だと知られた途端興味をなくされた。
今では互いをいないものとして扱っている。
冷たいようだけど、意図して避けられたり悪口を言われたりするよりずっと居心地が良かった。
後継者になりそうな人とは一応関わりをもったけどね。将来役に立つと思うから。
株のことだって将来を見越してのことだ。
私は紅くんたちのように働いてお金を稼ぐことはできないし、時峯藤治のように財団を率いることは出来ないから、株主としてお金を稼ごうと思う。