月ノ蝶、赤縄を結ぶ


 そんなことを考えすぎたせいか、ついに幻覚が見えるようになったのかもしれない。


 クリスマスイブに時峯藤治主催のクリスマスパーティもどきをした夜、布団の中で虚空を見つめていると、静かに窓が開けられ人が入ってきた。

 すぐに閉められたけど、風に乗れられやってきた雪が舞う。

 敵襲かと思い身構えたけど、現れた人物を見て何も考えられなくなった。



「茜」

「紅くん・・・!?」



 会いたくて仕方がなかった人が、今目の前にいる。

 私の頬を撫でる手には体温を感じられた。

 幻覚なんかじゃない。

 紅くんが今、私の目の前に立っている。



「どうしてここに?」



 もし夢なら醒めないでと願いながら、恐る恐る尋ねる。



「茜に会いに」



 私の控えめな態度がおかしかったのか、紅くんは小さく笑った。
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