月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 ここは月詠家本邸だった。



「そう。0時に迎えに行ったんだけど、寝てたからそのまま連れてきちゃった」



『きちゃった』って言い方、おちゃめで可愛い。

 今頃時峯邸では時峯藤治らが大騒ぎしているだろう。

 想像しただけで笑みがこぼれる。

 してやったりだ。

 私の顔をかかる髪を耳にかけながら、紅くんが微笑む。



「茜、18歳の誕生日おめでとう」

「ありがとう」



 おはようのキスを交わし、身体を起き上がらせた。

 先にベッドから降りた紅くんが手を差し出す。



「じゃあそろそろ行こっか」

「うん!」



 紅くんの手をとり、私は一歩踏み出した。






 空高く晴天。
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