月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 雲ひとつなく、天気までもが私たちを祝福しているようだった。

 白璧の教会と青空がとても映えている。

 目の前が開かれ、慣れないヒールでバージンロードを歩く。

 観客席には撫子や長春、月詠会の幹部と構成員たちだけではなく、烏賀陽組を天ちゃんと蒼くんもいた。

 父親役として私の隣を歩く朱雀は、本当に感慨深そうな顔をしている。

 私の実の父親である時峯楝は消息不明だから論外だし、1年しか付き合いのない祖父である時峯藤治よりも幼少期から私を知る朱雀の方に務めてもらいたいと思い、お願いしたのだ。

 実際に私のウエディングドレス姿を見た朱雀は「立派になられましたね」と微かに涙を滲ませていた。

 多分今日一番最初に泣いたのは朱雀だと思う。


 聖壇前には濃紺色のフロックコートを着た紅くんが待ち構えていた。

 ヘアスタイルはいつものセンター分けではなく、オールバックだった。

 前髪がない分、綺麗な顔がしっかり見える。


 私が紅くんの手をとると、紅くんが感極まったかのように呟いた。



「可愛いね」

「え?」
< 273 / 278 >

この作品をシェア

pagetop