月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 確かに年齢的にお兄さんの方が近いし、私も最初は「おにーちゃん」って呼んでたっけ。なんだか懐かしい。

 私の夏休みは、私史上最も充実感に満ちたものになった。

 今までの夏休みは家で独りで宿題をしたり、うだうだしたりしていただけだったからね。

 それはそうと・・・─────



「・・・暑い」



 9月になったというのに、日差しは衰えることを知らずジリジリと降り注いでいる。

 こんなに暑いのになんで学校に行かないといけないのかよく分からない。

 紅くんとの思い出に後ろ髪を引かれながら登校しているからか、いつもより歩幅が小さい。

 このままだと遅刻しちゃう。

 でも歩くスピードを上げる元気はない。

 別に今日くらい遅刻してもいいよね。

 私が学校にいてもいなくてもみんな気にせずに生活するだろうし、寧ろ私がいない方が平和かもしれない。

 私だって色んな人に色眼鏡で見られるのはいい気がしない。
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