月ノ蝶、赤縄を結ぶ
トクベツってことは王子様は長くここにいられないってことだ。
ほら、シンデレラも夜の12時がきたら魔法がとけちゃうし。
今にも泣き出しそうな私を見かねたのか、王子様は頭をそっと撫でてくれた。
頭を撫でられたのは、私にとって初めての経験だった。
「そうだよ。事情は言えないけど、俺も1人だよ」
「ひとりがさびしくないの?」
「慣れれば平気だよ」
「わたしはさびしい」
王子様は私と目線を合わすためにしゃがんでくれた。
近くで見る王子様は、本当に絵本からでてきたようにキラキラして見えた。
「じゃあ俺といていいよ」
この言葉に私がどれだけ救われたのか計り知れない。
このとき、私の心に光が灯った。
「やったぁ!わたし、こちょうあかね!」
嬉しさのあまり抱きつくと、王子様は優しく受け止めてくれた。