月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「わたしはだいじょうぶだよ」
えへへ、といつものように笑うと、紅くんが私を強く抱きしめた。
「茜は優しいね」
私の存在を確認するように、紅くんは優しく撫でてくる。
「茜が無事でよかった」
絞り出すような声に、胸が切なくなった。
紅くんに元気になってほしくて、強く抱きしめ返した。
「茜」
「なあに?」
「俺は茜が好きだよ」
「私も紅くんだいすき」
「・・・ありがとう」
このときの私は、紅くんの方から初めて「好き」だと言われて浮かれていた。
だから気づきもしなかった。
私たちがお別れするまでのカウントダウンが、既に始まっていただなんて。