月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「うん。昨日イヤな目にあったから今日は紅くんといっしょにいる」
お膝に乗ると紅くんが支えてくれた。
昨日は紅くんが私を助けてくれたんだから、今日は紅くんに恩返しがしたい。
学校に行かずに紅くんのそばにいるなんてお易い御用だ。
寧ろ私もそれを望んでいる。
紅くんは何度か口を開けたり閉じたりした後、慎重に切り出した。
「あのさ、茜」
「どうしたの?」
「裏社会の人間って分かる?」
『裏社会』という単語からパッと思いついたのは、ニュースで流れた、警察がアジトに踏み込もうとしている場面だった。
「こわい人のこと?」
「まぁ、そうだね」
紅くんはそう言いながら俯いてしまい、私を支える腕も強ばってしまった。
それでも余計なことは言わず、次の言葉を待つ。