月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 それよりも話が進むにつれ、心臓が妙に脈打った。

 気持ちが逸る。

 何か嫌な予感がする。

 私の根底を覆す何かが起ころうとしている気がしてならない。


 残念なことに、それは当たっていた。



「だから茜、もうここに来ちゃダメだよ」



 言葉が出なかった。



「俺たち距離を置こう」



 上手く息が吸えない。

 息苦しい。

 それでも必死に言葉を紡いだ。



「や、やだ!紅くんといっしょにいる!」



 気持ちが昂りすぎて、声が掠れて裏返った。

 紅くんは血が出そうなほど握りしめていた私の手を包みながら、ゆっくりとかぶりを振った。

 初めて紅くんにわがままを受け入れてもらえなかった。

 紅くんなら絶対に受け入れてくれると、ずっと甘えきっていたことに気づいた。

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