月ノ蝶、赤縄を結ぶ


「茜ならきっと俺以外にも好きな人ができるよ」



 昨日私を好きだと言ったその口で、私と自分の線引きをした。

 それが何より悲しい。

 私を突き放さすためなら、なんで好きって言ったの。



「バイバイ、茜」



 それからの出来事はあまり覚えていない。

 ただ、脳がずっと危険信号を出している。

 このままじゃ私は独りに逆戻りするぞって。

 お別れの場面だけが何度も再生され、頭が割れそうだ。

 そんな私を現実に引き戻したのはお母さんだった。



「一体どこに行ってたの!?」

「えっ」



 家に帰った途端、頬に衝撃が走った。

 反射的に手で押さえると、手の冷たさが伝わりヒリヒリした。



「学校から連絡があったわよ!今日学校をズル休みしてたんだってね」
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