月ノ蝶、赤縄を結ぶ
あっ。
気が動転していてすっかり忘れていた。
サァァと血の気が引く。
頬には熱が溜まっていくのに、身体は真冬のように冷たい。
「昨日だって家にいなかったでしょう?てっきり友達の家にでも泊まってると思ったのに、どこほっつき歩いていたの!?」
嘘、確認されてたの?
嫌な汗が背中を流れるのを感じた。
お母さんのお説教はとどまることを知らず、それどころか勢いが増していく。
「もしかしてあの噂は本当だったの!?」
「う、うわさ?」
「そうよ!あんたが危ない連中の家に出入りしているって客から聞いたの!!本気にしてなかったけどまさか本当なの?!お母さんに迷惑かけないでよ!!」
こんなときですら私への心配ではなく自身への迷惑を気にするあたり、さすがお母さんだと思う。
でも、そういう自分はどうなんだろう。
今まで私の生活にどんな影響を与えてきたのか本当に知らないのかな。