月ノ蝶、赤縄を結ぶ
放課後になるとすぐに学校を飛び出し、紅くんの家へとひたむきに走った。
教科書や筆箱がランドセルの中で暴れてうるさかったけど、一切構うことはなかった。
幸い門は開いていて、玄関の扉の前に叫んだ。
「紅くん!いるんでしょ?ねぇ!ねぇ!!」
扉を開けようとしたけれど、鍵が閉まっていてそれは叶わなかった。
だからその分大きな声で話しかけた。
人影は見えない。
でも、そこにいるんだって何となく分かる。
「紅くんは来ちゃダメって言ったけど、わたし言うこと聞くって言ってないからね!明日も来るからね!」
日が暮れ始めたところでそう言い残し、紅くんの家を後にした。
そして次の日も。
「紅くん!今日ね!図工で絵をかいたんだけどね!」
そのまた次の日も。
「べーにーくーーん!!!」
ひたすら紅くんの家に向かって叫び続けた。