月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 前なんて「お父さんを返してよ!!」って怒鳴られたんだよ。

 私は何もしてないのに。

 ただ独りが寂しいだけなのに。



「みんな、あたたかくないもん」



 お母さんですら私を煙たがるんだよ。

 もう大きい子なんだから一人でできるでしょ、私に迷惑かけないでってそればっかり。



「紅くんだけが、わたしのすきな人だよ」



 紅くんがいれば寂しくない。

 紅くんがいれば私は無敵なの。



 とても立っていられなくて、その場にうずくまった。

 このときには既に夜の帳は落ちていた。

 今日は新月。

 月は自身を照らしてくれる太陽の光を失い、星だけが煌めいている。

 今の私みたいだなんて感傷的な考えがよぎる。

 私も月も、光がなければ輝くことができないのだから。

 涙はとうに枯れた。

 水分が足りなくて目がしばしばする。

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