月ノ蝶、赤縄を結ぶ
 寒い。

 自身を抱きしめても震えが止まらない。

 目を閉じたら紅くんとのお別れの場面が自動再生される。

 あの時、紅くんも泣きそうな顔をしてたよね。

 紅くんも嫌々お別れしたんだよね?

 ねぇ、紅くん・・・────。





「ずっとそうしているつもりなの?」

「紅くん・・・?」



 一瞬私が作り出した都合のいい幻かと思った。



「茜」



 紅くんが私の頬にそっと触れた。

 幻じゃない。

 紅くんがちゃんと私の前に立っている。

 私に光が射した。



「こんなに冷たくなって・・・何で帰らなかったの?」

「だ、だって紅くんが会ってくれないんだもん!」



 紅くんはしゃがみこんで私に上着をかけてくれた。
< 49 / 278 >

この作品をシェア

pagetop