月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 私のためにネット通販で買ってくれたモコモコの上着。

 きちんと洗濯されていて、全身がシトラスの香りに包まれた。



「やっぱり紅くんはやさしいね。だいすき!」



 久しぶりに心から笑えた。

 紅くんの優しさが冷えた身体に浸透していく。



「茜、ダメだよ。そんなこと言っちゃ」



 紅くんは項垂れている。

「なんで?」と首を傾げると紅くんは少しだけ顔を上げた。



「俺が、離れられなくなるでしょ」

「はなれないでいっしょにいてよ」



 くいっと服の裾をひくと長い息を吐かれた。



「無理だよ。無理なんだよ」



 紅くんが微かに震えている。

 私が独りが怖くて震えていたように、紅くんも何かを恐れているんだ。

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