月ノ蝶、赤縄を結ぶ



「・・・ちょっとなら」



 めんどくさくて1回すっぽかしたら次の日靴箱にビリビリに破かれた紙を敷き詰められるという嫌がらせをされたので一応行くようにはしている。

 ゴミの処理より小言を聞く方が楽だからね。



「ねぇ前に言ったこと覚えてる?」

「大体は」

「じゃあなんで真那くんと普通に喋ってんの?」

「喋りたくても喋れない子もいるんだから気ぃ使いなよ!」



 何だろう、この既視感。

 あ、そうだ。

「お腹いっぱい食べれない子もいるんだからご飯残しちゃダメだよ」に似ているんだ。

 思い出せてスッキリした。

 というかそもそも鈴木真那が勝手に話しかけてくるのに私にどうしろって言うんだろう。

 無視しろとか?

 それはそれで「真那くんに失礼な態度とらないで!」って怒るんじゃないの?

 何を言っても難癖つけてくるなんて粘着質なアンチみたい。

 今日も今日とて適当に話を流していると、じゃり、じゃり、と足音が聞こえた。

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