月ノ蝶、赤縄を結ぶ


「あのさ」

「うん」

「お前好きな人いんの?」

「いるよ」



 すんなりと答えたけど、それが紅くんだよ、とは教えない。

 言っても分からないだろうし。

 それに私が易々と紅くんのことを口走れば迷惑をかけることになるかもしれない。

 だって紅くんはずっと私を守りながら関係を続けてくれたから。

 小学二年生の頃、登下校中に舎弟の姿をたまに見かけたのはきっと私の護衛のためだ。

 もし私と紅くんの関係が公になれば、また私はどこかの組織に連れ去られるだろう。

 そうなれば元も子もない。

 約束の印としてくれた指輪だっておもちゃだった。

 これが本物だとしたらとっくの昔に盗られて売りさばかれていたと思う。

 紅くんはより確実な方法で関係を繋ぎ止めようとしてくれたんだ。


 私が紅くんのことを考えて満たされているとは露知らず、鈴木真那は質問を重ねた。



「俺の知ってる奴?」

「内緒」

「あっそ・・・」
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