月ノ蝶、赤縄を結ぶ



 鈴木真那は力なく呟くと唇を噛んだ。

 何かをこらえているようだった。



「言いたいことあるなら言えばいいのに」



 そう促すと、私のことを真っ直ぐ捉えた。



「じゃあ言うけどさ」

「うん」

「俺、お前のこと好きなんだけど」

「─────え?」



 予想外の告白に理解が遅れた。

 鈴木真那は耳を真っ赤にして私の返事を待っている。

 幾ら期待されても、答えは一つだけなのに。



「・・・ごめんね。私には他に好きな人がいるから、応えることが出来ないの」

「そうかよ。何となくそんな気ぃしてたわ」



 鈴木真那はまた眉間に皺を寄せながら私から視線を逸らした。


 本人の言う通り、鈴木真那は私のことをちゃんと好きなんだと思う。

 でも鈴木真那の"好き"は私の"好き"とは違うと思ったから、あえて突き放すような言葉を紡いだ。
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