月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「え、茜?」
「やっぱり紅くんだ。おぼえててくれたんだね!うれしい!」
にぱっと満面の笑みを向けると、紅くんは前みたいに撫でてくれた。
撫で慣れていないのか、紅くんの手がぎこちない。
そういう不器用なところは少女漫画のヒーローっぽくてかっこいいと思う。
声は前に会った時よりも低くなっていて聞いてて心地がいい。
ふと私が抱きついていない側の手を見ると、紅くんは知らない男の人の襟の掴んでいた。
その男の子はさっき飛んできた人と同じ制服を着ていた。きっと仲間だ。
じゃあ人をぶっ飛ばしたのも紅くんかもしれない。
私の視線の先に気づいた紅くんは、それを隠すようにパッと離した。
地面に落とされたからまたうめき声が聞こえたけど紅くんは気にしていない。
「あー・・・これはね、茜」
「うん」
「他校の人間に喧嘩売られて殴りかかってきたから返り討ちにしたんだ。茜がいる方に人を飛ばしてごめんね。怖かったでしょ」
紅くんが謝る必要ないと思う。
だって先に紅くんに酷いことをしようとしたのはこの人たちなんだから。