月ノ蝶、赤縄を結ぶ
身体の芯が冷えてきた。
寒いよ、紅くん。
もうずっと震えているよ。
私はきっと、鈴木真那の気持ちを受け入れ、普通の高校生の恋愛をした方が楽になれた。
それでも私は受け入れられない。
紅くんが好きだから。
「迎えに行く」って言ってくれたから。
指輪を両手で握りしめて何とか立ち直り、購買でパンを購入した帰りにまた女の子に呼び止められた。
昨日とは違う子たちだ。
「昨日胡蝶さんが真那くんと帰ってるの見た子がいるんだけどまじ?」
見られてたんだ。
わざわざ施設に一番近いコンビニで待ち合わせしたのに。
驚きをおくびにも出さず、かぶりを振った。
「ううん。見間違えだよ」
「そんなわけないでしょ!?」
確信があるのにわざわざに聞きに来ないでよ。二度手間じゃん。