月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 心の中で文句を言っても顔には決して出さない。



「真那くんみたいな綺麗な茶髪がそうそういるわけないし、胡蝶さんの髪色だって珍しいじゃない!」



 声を荒げながら私の髪に手を伸ばしてきた。



「触らないで」



 その手を反射的に叩いた。

 私の髪に触れていいのは紅くんだけだ。

 前はよく「茜の髪は綺麗だね」って褒めてくれた。

 それ以来髪のお手入れを欠かしたことはない。



「いったぁ」



 私が手を叩き落としたことで勢いが削がれ、彼女達は被害者面を始めた。



「胡蝶さん凶暴すぎない?」

「こっわ」

「真那くんに言いつけるからね!」



 そんなこと報告しても鈴木真那は聞き流すだけだと思うよ。

 火に油を注ぐようなものだから言わないけどね。


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