月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 ふと校門に黒色の高級車が停まっているのが視界に映った。


 その扉が開かれ、出てきた人物に釘付けになった。


 綺麗な銀髪の男の人で、深黒のマキシ丈コートを来ている。

 たったそれだけで私は無性に惹き付けられた。

 身長も変わっているし髪色だって違う。

 それなのに立ち姿だけですぐに分かった。



「─────紅くん!」



 叫びながら立ち上がると教室中の視線が私に集中した。

 そんなことは端から眼中になく、衝動的に教室を飛び出した。


 紅くん。

 紅くんだ。

 紅くんがお迎えに来てくれた。


 息を切らしながらも止まることなく階段を下り、靴も履き替えずに校庭に出た。



「紅くん!!!」



 私の声に反応して紅くんが振り向いてくれた。
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