月ノ蝶、赤縄を結ぶ
紅くんの真黒いの瞳が見開かれる。
「茜!」
あぁ紅くんだ。間違いない。
相変わらず綺麗に澄んだ声をしている。
走るのももどかしくて脚をもつれさせながら飛びついた私を紅くんはがっしりと抱きとめてくれた。
「会いたかったよ、紅くん。ずっと、ずっと」
涙腺が崩壊した。
「俺も会いたかった。遅くなってごめんね」
シトラスの爽やかな香りが肺を満たす。
紅くんが縋り付くように私を引き寄せた。
私たちの間に何人たりとも入れないように、強く、強く。
お互いの体温が同じになるくらい抱きしめ合ったあと、紅くんが腕の力を少し緩め、視線を合わせてきた。
瞳に映る私は涙でぐじゃぐじゃだけど、幸せに満ちた顔をしている。