月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 その理由は茜が教えてくれた。


「みんな、おかあさんに『あかねちゃんとあそんじゃダメ』っていわれたんだって」と、俺の脚に必死にしがみつきながら。



「おにーちゃんも1人だから、おなじなのかなっておもって・・・・・・」



 今にも泣きそうに呟いた。

 こんなに小さくてか弱そうで震えている子を突き放すことは出来なかった。

 だがいくら俺が構ったとしても、今日の夕方にはお別れするのだから、結局ただの気休めにしかならないだろう。

 それでもこの子を1人にしておけなかった。






 あれから茜のことは時々思い出していた。

 あの子は今小学生か、友達はできたのかな、とか。

 そんなことを考えていたからだろうか。

 喧嘩を売ってきた輩をぶっ飛ばした先に茜はいた。

 どうやら俺のことを覚えていたらしく「紅くん!」と前と変わらない温度で俺の名前を呼んだ。

 花がふわりと咲いたような可愛い笑顔だった。

 つい流されそうになったが、俺と一緒にいるところを誰かに見られたら茜に危険が及ぶかも知らない。
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