月ノ蝶、赤縄を結ぶ
「でも黒髪の方が好きなら戻すよ」
「どっちもかっこいいから紅くんの好きにしていいよ」
中学時代の紅くんは夜よりも深い黒色のマッシュヘアで、どことなくあどけなさはあった。
まぁ幼少期の私には十分大人に見えてたけどね。
それに対して今の紅くんはお星様のようにきらきらしている銀髪をセンター分けにして、毛先は外側に流している。
どっちの紅くんも違う良さがあってかっこいい。
「茜はそういうことサラッと言うよね」
紅くんは耳を桃色に染めながら私の頬をつんつんした。
照れ隠しだ。
紅くんでもそういうことするんだと知ったら、なんだか可愛く見えてきた。
かっこよさと可愛さが共存するなんて流石は紅くんだ。
当の本人は「もちもちしてる・・・」と物珍しそうに呟いた。
こうしていると睡眠欲はだんだんと薄れてきて、それに反比例するように食欲が湧いてきた。
「・・・紅くんお腹空いた」
「何か用意させるね」
私を抱きしめる力をゆるめ、舎弟に指示しに行くと言って部屋を後にした。