月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 紅くんが障子を閉めたところで改めて部屋を見渡してみた。

 部屋全体の雰囲気は昔と変わらない。

 強いて言うなら中学校関連のものが全て無くなっているぐらいだ。

 あと、棚に並べられた資料の量が増えている。

 生活に必要最低限なものしか置かれていないのは相変わらずだ。

 今まで何となく夢見心地だった気分が落ち着いてきて、代わりに無事にこの家に帰ってこれたんだと安堵した。


 私はこれから紅くんと一緒に暮らしていく。


 その事実に胸を高鳴らせた。






「紅くん、これ・・・」

「覚えてた?」

「うん」



 食卓に並べられたメニューを見て目頭が熱くなった。


 だって、あの日と同じだったから。


 ハンバーグと味噌汁とポテトサラダとお米とミニトマト。
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